1、一人が好き

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高速バスを朝イチで乗れば、だいたい京都には十時には着く。 そこから行きたいお寺や神社へと行けば、お昼前には目的地に着ける。 自慢じゃないが、地図なしでも誰にも道を聞かなくても迷わず目的地まで行ける。 耳が聴こえなくても、言葉が話せなくても、平気。 一人が好きだから、平気。 悪口も聴こえない、悪口も言えないのだから。 一人で好きな事を、誰にも気兼ねなく自由に出来るから。 肩がぶつかれば、手話で《ごめんなさい》とやれば、たいていの人は私を避けて行く。 好きに笑えばいい。 好きに言ったらいい。 私は、何も聴こえないんだから。 写真に残る風景は何も語らない、変わらない。 ありのままの姿が永遠に残されたまま。 私と同じで、今ある私は永遠に社会から孤立したまま。 誰の手も加えられていない風景。 誰の手も掴まない私。 何だか、自分と似ていて風景写真が好きなの。 私だけは、きちんと見て何かを感じているから、心配しないで、その美しい景色のままで居てね…って。
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