びたーちょこ

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**** あーもう。 空を見上げて膝の上のチョコレートをつまみ上げる。 忘れようとしても、忘れようとしても。どうして周りは思い出させるんだろう。 涙なんか出やしない。 こんな真っ暗の中、バス停のベンチでチョコを食べる女なんて変すぎて。 「そうやっていつも一人で泣いてるんだ」 なっ! 慌てて頬に手をあてるけど、指先から伝わって来たのは頬の冷たさだけで濡れた感触はしなかった。 「な、泣いてないでしょ!」 睨み付けるように見上げると、趣味の良いちょっと緩めたネクタイと、ククッと笑う唇が目に入る。
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