びたーちょこ

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あれからもう一年もたっている。彼の愛なんて、一欠片だって残っていない。 残っていないはずなのに。 二人で帰ったこのバス停の椅子に座ると、あの頃に心が戻ってしまう。 『式場はさー、大きな教会がある所がいいな』 そう笑って言った彼の顔が、まるで昨日今日の事のように鮮明に思い出せる。 思い出すと心から苦い嫌な気持ちが溢れて来て。どうしようもなくなる。 だから私はチョコを食べる。 彼の苦さから逃れる為に。一時の甘さが私を救ってくれるから。
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