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広瀬に食べて貰いたかった。受け取って欲しかった。あげたい相手の元に辿り着けなかった可哀想なチョコレート。
拾って捨てようと手を伸ばすと、それを阻まれる
「待って」
トリュフを摘まんだままの私の手を、広瀬は口許へと持っていく。
え……やだ、何?
思わず目を瞑ると、指に伝わる柔らかな感触。
そして……人差し指をかじられた。
「なっ!」
「森下さん、これで恩返し1つ。
もう1つの恩返しは、俺の質問に答えてくれるだけで良いから」
広瀬の手が私の手首から、するりと手のひらへと移動する。指と指が絡まると微かな震えが伝わって来る。
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