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「ふぬぬぬ……何よこれ!やっぱり偽物なんじゃないの!?」
どれだけ引っ張っても、揺すっても動かない腕を持ち出すのを諦めて、私は少し考えた。
こんなに良く出来た偽物なんて、本当に作れるのかな?
触ったら本物の人間の腕っぽかったし、ほんのり暖かかったんだけどな。
仮に本物だったとしても、動かせなければ意味がない。
「仕方ないよね、他を探そうっと」
ロッカーを掴んで立ち上がった私は、携帯電話を室内に向けてもう一度見渡す。
そして、ゆっくりと教室の前の方に歩き出した時、その声は聞こえた。
あ~かい ふ~くをくださいな~
廊下の方から、どこかで聞いた事がある歌が聞こえて来た。
一体誰が唄っているのか分からないけど、不気味なその声の正体を確かめようなんてとても思えない。
明らかに美雪やあゆみとは違う声。
となると、小野山美紗か赤い人しかいない。
こっちに来てるなら、どこかに隠れなきゃ。
徐々に近付くその声の主に見付からないようにと、身を低くして机と机の間に隠れる。
し~ろい ふ~くもあかくする~
息をしても気付かれそうな重い空気の中、その声は教室の近くまで迫っていた。
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