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その光景を想像すると、つい笑ってしまいそうになるけど、そこはグッと堪えて耳を澄ます。
こんな所で襲われたら、逃げるどころじゃないもんね。
ジッと動かずに、置物のように静かに。
息もなるべくしないで赤い人が過ぎ去るのを待つしかない。
とは言え、赤い人がこの部屋の状況をスルーしてくれるとは思えないんだけど。
「うぅぅ……ここに誰かいた?……匂いが分からない」
ボソボソと呟くような赤い人の声が薄い金属の向こう側から聞こえる。
(よしっ!鼻づまりキタ!!)
本当に鼻づまりかどうかは置いといて、それでも私がここにいる事が分からないというのは助かる。
胸の内の不安と恐怖が、安堵と期待に変わって行く。
もしかしたら助かるかも……と、私が油断したその瞬間。
「ぅああああああああああああああああああああっ!!」
突然の大絶叫は、ロッカーの中にいる私にも容赦なく襲い掛かった。
鼓膜が破れるんじゃないかと思う程の強震に、慌てて耳を塞ごうとした私は、大きなミスを犯した。
腕が……ロッカーの内側の壁を擦り、小さな音を立ててしまったのだ。
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