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お腹の辺りに走った冷たい感覚の後、そこから下の感覚がなくなっていた。
「え?な、何!?立っていられな……」
ロッカーのドアが弾けるように開き、前のめりに倒れた私は、床に手を付いて、ようやく状況を理解する事が出来た。
手を付いた時、随分体が軽いと思ったけど……それは、私の腰から下がなかったから。
触ってみると良く分かる。
細くてくびれた腰は存在せず、ぶよぶよとした腸が切断されたお腹から出ていたのだ。
「あああ……ダメ!出ちゃダメ!」
必死になって腸が出ないようにするけど、今まで感じなかった痛みが、この時になってようやく感じ始める。
気を失いそうな激しい痛みに襲われても、私はどうする事も出来なかった。
最後に、私の下半身がどうなったのか……。
ロッカーの方を振り返った時。
立ち尽くす赤い人に阻まれて、私の自分の下半身を見る事も出来ずに、振り下ろされるその腕を見ていた。
赤い人の腕が私の胸を貫いた所で、やっとこの苦しみから逃れる事が出来るのだと、不思議と安心してゆっくりと目を閉じた。
今日は色々分かったから、明日からが本当の勝負なんだと、薄れ行く意識の中で考えながら。
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