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「気分は…いいです。あ、いいっていうのは、その…」
「いいわよ、慌てなくたって。あなたの彼はずいぶんいたずらっ子ね」
西田医師の目配せに、行人は知らん顔だ。
「あ、でも…ホントに、気分はいいです。スッキリしました」
「そう、よかった。…あなたは大丈夫よ。ちゃんと自分を立て直す事の出来る人だわ。少し肩の力を抜いて、ね」
「…はい」
西田医師の手は奈央子と変わらず小さめだけれど、節高で、力強い。
その温かさが、奈央子は嬉しかった。
「さて…あなたたち、お昼ご飯は?」
奈央子の手を、ポンポンと軽く叩いて立ち上がると、西田医師は腰を伸ばしながら言った。
「もうそんな時間ですか」
「どこかに入って食事って、なかなか難しいんじゃないの?」
「……」
ふたりは顔を見合わせた。
「またコンビニかな?」と来る時に話していたのだ。
「よかったら、ここでどうかしら?ふたり分くらいなら余分に作ってある筈だから。木下さん、食べたことある?」
「いえ…でも、いいんですか?」
「もちろん、お代は頂くけど。美味しいのよ、ここの食事」
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