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でも・・・と続けようとして、私の顎を持ち顔を上げさせる。
『そうじゃなかったんだ。
いつの間にか俺の中で、美咲がいることが当たり前になってた。
この部屋で飯作って、笑顔で迎えてくれて、文句言いつつも俺を受け入れてくれた。
もしかしたら、最初から美咲に惹かれていたのかもな。
女の前で素を出したのも美咲が初めてだったし。』
調子いいよな?って言う悠輔に、迷わず頷く私の様子を見て、
あやすように頭を撫でる。
『それに気付いたら、どんどん気持ちが大きくなっていったんだ。
美咲に触りたくて、そばに置いておきたくて、
笑った顔も怒った顔も泣き顔も、全て俺のものだって。
誰にも渡さない。そう思った。』
一筋の涙が頬から滑り落ちる。
『じゃあ・・なんで・・・私のこと・・離したの?』
震える声を絞り出す。
『隼人から美咲を欲しいって言われた。』
隼人君が?
『アイツ、根は真面目だから筋を通したいって。
遅く帰って来た日があったろ?あの時、隼人に会ってた。』
そんな事があったなんて。
隼人君は悠輔と話した後に、私にメールをしてきたんだ。
『ふざけるな。美咲をお前にやるつもりはないって言ったんだ。
でも隼人に、元々美咲は俺の事を好きだったんだから、まだ美咲に気持ちがあるなら、
俺に戻ってくるんじゃないか。そう言われて考えた。』
零れる涙を指で救いながら続ける。
『美咲に取って一番いいのは何なのか。美咲が幸せでいられるのは何か。』
美咲はどうしたい?俺はどうしたらいい?
あの悠輔の言葉の意味がようやく理解できた。
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