いつからだろうか。

1/3

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

いつからだろうか。

 僕の目の前に断頭台があるという異常が日常になったのは。最初はそれの名前すら知らなかった。世界史の授業でフランスの王妃が初めてそれをつかって死刑にされたという先生の説明とプロジェクターに映し出された、画像とともに目の前のそれがギロチンという名だと知った。  ――ああ、いつからだろうか。何百人もの罪人達の首(いのち)を切り落とした鋭い刃が日を経つにつれ、ゆっくり上がっていく事に。己の仕事を全うするのだと厳かに、少しずつ上がっていく。  この断頭台の存在は僕しか気づいていない。……違うな、僕にしか見えない。この前、友人が断頭台にぶつかりそうになったが何も起きず、すり抜けた。触れる事が出来ないのだろう。僕でさえ。「だろう」と弱気なのは、一定の距離をむこうから置いているようだからだ。近づけど、近づけず。離れても離れず。  「僕だけに見える」それだけの異常なら良かった。ただ僕が頭がおかしくなって幻覚を見ている小さな悩みとして。……本当にそれだけなら。  口の無い断頭台が言ってくるのだ「まだ、その時ではない」と。 「その時が来るまで決めろ」と音でなく、存在で発するのだ。何を決めるのだ? 何を決めないと行けないのか。  大声で叫びたい。君は何なんだ、と。意味が分からない。勝手に僕だけの所に現れて。どっか行ってくれ。今進路で悩んでいるんだ。君がいちゃあ、決められないんだ。  勿論叫ばず、自分の中で自己完結――解決延期をし、また同じ異常の毎日を繰り返していく。 ※本編とあまり関係ありません。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加