第???章

3/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「みんな、待って! 何かがおか―――――し……―――――」 あたしの忠告がみんなに届く事はなかった。眩む視界は、初めてこの世界に来た時と同じ感覚だった。でも、1つだけ違う事がある。 それは、痛みがあることだ。 あたしは魔王の背中から伸びる、鋭い何かに身体を貫かれていた。 じわりと血が滲み始めているのが分かる。 あぁ……、皆が遠退く……。それ以上近付いてはダメ…。 しかし、声が出ないため、皆に伝えられない。 (待って……気付いて…フォク!) あたしの思いが伝わったのか、異変に気付いたのはフォクだった。フォクはすぐさま駆け寄ってくれ、傷を診てくれた。 しかし、鈍い痛みと溢れ出る血のせいで意識は朦朧としていた。 ああ、あたしは帰れないんだ。戻れないんだ。 瞳から零れた涙は一筋の線を描き落ちていった。 あたしは、最期の力を振り絞り手を伸ばした。焦点が合わないので何処に伸ばしているか分からない。ただ、無意識にも近い状態と言うことは分かる。 伸ばした手は、虚空を掴んだだけだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!