最低な夜、コーヒーの彼

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社内で付き合い始めて二年。 将来の約束もしていた。 大学を出て大企業に就職、 やりがいのある仕事にも就いた。 二十代の女性なら、その次に意識するのは結婚だろう。 恋愛は不器用なタイプだと思う。 寄ってくる男性はいる。 けれど甘え下手な性格のせいか、他の女の子によそ見されて終わることが多かった。 それでも、三十代を目前にしてようやく最後の相手に辿り着いた。 …はずだったのに。 優しく誠実だった彼の態度が変化したのは、最近、彼が部門を異動してからだ。 彼からの連絡が減り、メールしても「忙しい」と事務的な返事がたまに返ってくるだけになった。 それでも、仕事なんだから仕方ない、って理解のある彼女でいようとしてきた。 それがいけなかったの? もっと我が儘言えばよかったの? どこが別れ道だったのかは分からない。 きっと、様子が変わった頃から曖昧に重なっていた関係。 私の姿を見ても、彼は女の子と繋いだ指を解きもせず、素知らぬ顔で通り過ぎた。 その瞬間、悟るしかなかった。 彼はその子を選んだんだ、と。 彼との将来なんて、 もう存在しないんだ、と。
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