コーヒーの彼の正体は

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(……先輩?……成瀬先輩!) どれぐらい停止してたんだろう? 舞台袖の三浦君の焦った小声で、 ハッと我に返る。 「…失礼致しました」 とりあえず謝ってみたものの。 どこまで説明したんだっけ…? すると、焦る私の目の端に、 男が笑いを堪えるように 表情を歪めたのが見えた。 笑ったように見えたのは、 気のせいかもしれない。 でもそれは、あのコーヒーの彼が 去り際に見せた表情を思い出させた。 「……っ」 その瞬間、動揺した私の脳裏に、 あの夜の情けない醜態が一気に蘇った。 わずかに騒つく場内。 室長だろうか、 どうしたんだと言いたげな咳払いが響く。 しっかりしろ、私。 こんなことで プレゼンを止めてしまうなんて。 (8ページ左下の枠からですっ) 三浦君の小声に助けられてなんとか再開したものの、動揺が後を引いて、後半は上出来とは言えないものだったと思う。
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