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見ると、少し離れた場所に、
背の高い男が立っていた。
無造作に整えられた髪。
すっきりとした面立ち。
冷たさを感じさせる、
無遠慮な視線。
……コーヒーの彼だ。
明るい場所で姿を見るのは
初めてだけど、一目で確信した。
「…先輩、知り合いですか?」
動揺して口がきけない私に、
三浦君が小声で怪訝そうに聞いてきた。
「成瀬さんとは同期。
今日は海外出張中の課長の代理出席」
固まっている私に代わり、
彼が短く答えた。
「ど、……ど、同期?」
ここでやっと、声が出た。
なのにカミカミ。
しかも声が裏返った。
あの日の自分の醜態を思うと、
何もかも不様すぎて嫌になる。
今日のプレゼン失敗の原因もこの彼は分かっていて、内心笑っているに違いない。
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