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「初めまして、柳葉 恭と言います」
なんとも爽やかな笑顔でアイサツをする男性。
整っている顔立ちに、凛とした声。
完璧だ、なんてちいさく思う、
だけど、思うだけ。
相手も笑顔なんだからと、私も笑顔を返した。
「白菊 希愛です。初めまして、柳葉様」
愛想笑いは当たり前。
それは当然のことでしょう?
柳葉 恭(やなぎば きょう)
この人が、今日から私の夫になる人。
二十歳までに恋人を作らなければ、親の決めた相手と結婚をする。
親がそう決めた約束が、今目の前で果たされようとしている。
そんなに私に家から出ていって欲しいのか。
なんて問うのも面倒で。
私はされるがままになっていた。
恋人なんてできるはずがない。
好きな人は...いる。
でも、それは一生叶うことのない恋で。
そっと蓋をすることにした恋。
それでも、ずっと好きでいようと決めた恋。
だから、結婚したとしても自分の夫を愛すつもりなんてないし、今日知り合ったばかりの人を愛せなんておかしいと思う。
「それじゃ、後は若いものどうしで♪」
相手方の親がなんとも素敵な笑顔でこちらの親と一緒に席を外した。
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