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瑠璃子はずるい。僕にこんなにも希望をくれるのに、彼女に対してしてあげることは何もできない。
――僕は愛を貪るだけの愚鈍な悪魔のようだ。ただ明日への希望を貰ってばかりの人生のように感じられて、少しだけ瑠璃子を強く抱きしめる。
「痛いよ、お兄ちゃん」
「ああ、ごめん瑠璃子」
また一つ僕は瑠璃子に謝ってしまった。僕にとって彼女は天使だ。幼い頃からずっと隣にいて、気がつけば兄妹以上に、瑠璃子を一人の女として見るようになっていた。
二人で暮らすようになってから、より一層と彼女に対する愛情は深まっていくばかりだった。時には瑠璃子を求めたりもした。処女を貫いた時の罪悪感と瑠璃子の涙を見て、僕も泣いた。だけどもう後戻りなどできないのだ。僕には瑠璃子しかいない、ほかに何もいらない。
僕たちに親はいない。過去、僕がまだ小学生だった頃に瑠璃子の誕生日を祝うために、父と母と僕を乗せた車がトラックの居眠り運転が引き起こした事故に巻き込まれた。父と母は即死だと告げられた。生きているのは奇跡だとも言われた。
しかし、僕にとってみれば、起き上がったら全てが終わっていたのだ。
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