仕度

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「誰だよそいつ。プロジェクトにタッチしてなかったお前に頼むより、チーム内の奴に聞いた方が早いことだろ?  それで、そいつはどこへ行ったんだよ」 「帰った」 「は!?」  柄沢の眉がピンと跳ねたのが、画面から目を離せない俺でも分かった。  もとから感情表現の大きな奴だが、自分の立場と置き換ええて一層腹が立ったのだろう。 「まぁ、帰っていいと俺が言ったんだけどな」 「どうせ”やることないから帰りたい”とか言われたんだろ?  最近の若い奴らは、早く帰ることしか考えてない」  怒りの形相が、あきれ果てた表情へと変化する。  ぐっと椅子に深く腰掛けたのか、椅子がギシリと音を立てた。  色々思うところがあるのだろう。  深く息を吐き出すのが伺えた。 「遅くまで会社に残るのが良いことじゃ無いからな」 「なに、いい子ちゃんなこと言ってるんだよ。 早く帰りたきゃ、早く仕事を終わらせることだろう。 俺たちだって出来ない仕事を押し付けてるわけじゃない。 って、・・・・木島、このことはリーダーには話したのか?」 「さっき簡単にメールした。 このままじゃ期限までに終わりそうにないからな。 それに少し無駄なところがあったから、他と調整して変更させてもらえないかっって」  同じリーダーの立場として聞いてきたのだろう。  誰だって、勝手に自分の仕事を荒らされるのは嫌だろう。 それは俺だってわかっている。   「ったく。マジで面倒見の良い奴だなぁ。 ほっときゃいいのに。俺のチームにほしいくらいだ」 「冗談はよせって。今の仕事はどうするんだよ」 「そうだよな。。  でも、ここにいれば、お前の方が俺よかずっと・・・・・」 「柄沢」  それ以上の言葉を聞きたくなくて、鋭く名前を呼んだ。 「…すまん。それで、お前このプログラムどうするつもりなんだ?」  話しを反らそうととしたのが見え見えだったか有難かった。 それは、つい先日まで悩んでいたことに直結していたから。 そして、話題の転換のためにその答えは、後ろからの声が変わって答えた。
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