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「よし!じゃぁ、木島の復帰を祝って、かんぱ~い!」
柄沢の明るい声に、同じくジョッキをあおる。
会社の近くにある24時間営業の居酒屋に入って、酒を飲みつつ話を進めるうちに、今回の発端が見えてきた。
「あいつ、そんな奴だったのか・・・・」
「ああ。今回の仕事をもらう代わりに、ウチが引き受けることになったんだが」
「しかも東間は御機嫌伺いに行かされてか?さすがに酷いだろう、それは」
人がいればしがらみが生じる。
だが、今回はそのしがらみも酷いものだった。
今回の客は、ウチの得意先だった。
今までに何本もの仕事をさせてもらい、そのメンテナンスもしてきた会社だ。
その会社のお偉方のボンボンが、大学を出てから何の職にも就かずにふらふらしていたらしい。
だったら自分の会社に入れれば良いと思うのだが、流石に親だけあって、自分の子供の性質はよく理解していたのだろう。
自社に入れても使えないと思い、協力会社であるウチに白羽の矢が立てられた。
もちろん断ることはできたろう。
しかし上層部はこれからの仕事をとることを優先させた。
仕事を振るのも所詮人間だ。
関係者が居れば、仕事もそちらに流れやすい。
同業他社などいくらでもいる中で、他社を圧倒するために、受け入れたのだ。
「縁故をひけらかす程、落ちぶれてはいなかったけどな。こうも仕事ができないとは」
「分かっていたなら、細かく見てやった方が良かったんじゃないのか?」
「そうしたくても東間にはできなかったのよ、木島ちゃん。
なんだかんだと呼び出されてるんだって?」
「・・・・ああ」
同じ職場内では知れた話だったのだろう。東間は苦々しい顔をしてビールを飲み干した。
「ウチの会社は海外ともやり取りしてるんだから、夜遅くなることだってあるし、社員の半分は外国人だ。
それを分かって、それでも押し付けたんだろうに」
「まさか、そんなことで呼び出されるのかっ!?」
あまりの理不尽さに、流石に冗談だあろうと思ったが、東間が一層苦い表情が事実を裏付けていた。
「表向きは、メンテナンスなんだけどな。本来なら、営業レベルでなんとでもなるんだ」
「今回のチームにも、それで入ってるってわけか?お前もそんなチームのリーダーにつけられるとは、ついてないなぁ」
「そんなに言うなら、俺と変わるか?」
「あ~無理。東間でそんなんだったら、俺なら何するかわからん」
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