仕度

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 確かに。 柄沢という男は、明るい。 が、几帳面なシステムを組むだけあって、曲がったことが嫌いだ。 縁故で入っていた社員など下につけたら、どうなるかわからない。 「東間の立場は分かった。だが、このまま続けさせるつもりか?」 「・・・・それも、明日人事に相談する。 本人の意向と、先方のたっての要望でウチの部門にいるが、正直使いこなせない駒は置いておけない。 このまま使って、客先に事実を突き付けてやろうかとも思ったんだが、それでも面倒を見ろと言われるのが関の山だ」 どんな理由であれ、不完全な製品を収めて良い訳が無い。 そんな事くらい分かっている。 分かっていても。 「納得できるわけねぇーよなぁ。 まぁ、それでも俺らはしがない中間管理職だからなー」 柄沢のいう通りだった。 一時の感情で、会社に損害を出す訳にはいかない。 それは、やがては自分に返ってくる業だ。 「ウチのプロジェクトから外せば、俺が呼び出される外もなくなるだろう。 木島も居てくれれば、なんとか挽回できるしな」 少し明るい口調になった東間に対し、不安が口をついて出る。 「しかし。此処にきての部署の異動に、相手が納得するのか?」 今日見た限りでは、そこまで酷い奴には見えなかった。 確かに問題はあるが、人事部を動かすだけの材料には思えない。 「たぶん、それは大丈夫だ」 ゴトンと空のジョッキを置いた東間が、人の悪い笑みを浮かべた。 「あー。終わったな。こいつに裏の顔出させたんだ。こりゃ、詰みだ」 人当たり良さげに見えるが、それだけの人間が生き残っていけるわけがない。 東間にしろ柄沢にしろ、そこまでの地位に就くまでのことはしているのだ。 しなかった自分が、都合よく回されて行くのも、当然のことであるように。
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