仕度

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仕事を辞めたいと感じたのは、ただただ疲れたからだった。 自分のセクションは、海外を相手にする金融のシステムを組み立たてる。 平たく言えばそんな仕事で、同僚の半数は外国人だった。  自分も仕事で数年アメリカで暮らし、英語もそこそこに話せた。 システムを構築するのは楽しかったが、勤務歴が長くなるにつれて、英語力を買われて、新人外国人社員の研修やら、そこでの交渉力を買われて、営業のような仕事がメインになり、今の仕事に違和感を感じるようになった。  クライアントが何を求めているかを知るために、打合わせをするのは良い。 仕事を円滑にするために、新人に教育するのも立派な仕事だ。 でも仕事をとる為に、新規の会社に飛び込んでいくのは、やはり違う。  新規で話を聞いてもらえるのはまだいい方。  大概は電話で断られるのが常だった。  勿論、社内にいても、仕事は増えない。  新規を獲得すれば、そのまま本来の仕事へと繋がるのは理解できる。 だが、もし仕事が取れたとしても、社内にいる若手に仕事に行ってしまうのではないか。 一つ取れれば、では次もと、いつまでも外周りをさせられるのではないかと、不安が付きまとった。    そんな時出会ったのが、真琴さんだった。
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