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そうこうして巡ってきた12月。
「いつも美味しい紅茶を頂いているお礼です」
「え?」
彼女がティーカップを置くのを見計らって、テーブルにそっとそれを置いた。
多分、彼女が買っているであろう紅茶専門店の、クリスマスギフト。
アポイントメントまでの時間潰しにと、立ち寄る機会の増えた紅茶専門店で、初めて買ったものだ。
『ラッピング致しましすか?』
いつも試飲を勧めてくれる店員にそう聞かれて、焦ったのを覚えている。
『あの、派手にならない程度にお願いします』
『こちらのリボンシールでしたら、シンプルですが、一層ギフトらしくなりますよ』
確かに、小さな造花で飾り立てるよりは、シンプルだ。
貰ってもらえるかさえも分からない相手に対する贈り物だ。
派手に飾ってドン引きされるよりは、さりげなく渡した方が、受け取ってもらえる確率は高い、かもしれない。
『お色はどうなさいますか?』
『白で、』
紅茶専門店だけあって、紅茶をイメージいた深い赤や、緑茶の緑もあった。
でも白いソレを見てしまえば、選択肢は一つだった。
そうこうして、手のひらサイズの平べったい箱が完成した。
濃紺の夜に、白い雪や、白い家が描かれた包装紙に、同じく白のリボン。
中には、丸い紅茶の缶が一つ入っている。
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