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「先輩。あの、そろそろ、俺・・・・・」
「あ?」
完全に目の前の画面に意識をとられていた俺は、その声に、はた と我に返った。
振り返ると、どこからか椅子を持て来た問題の後輩が、困り顔で立っていた。
「どうした?」
「先輩、時間は大丈夫なんっすか?」
「ああ、まだ半分も見てないからな」
それは複雑な公式を解くような作業で、ぱっと見ただけでは確認はできない。
最初から読み解いて、一度自分の中で消化していくとなると、自然と時間がかかるのだが。
「お前、帰りたいのか?」
「いつも、このくらいの時間には上がってたんで・・・」
時計の針は10時半を回ったところだった。
他の同僚たちは、まだ仕事をしているようだった。
『おいおい、他の奴らから遅れをとってるって自覚も無いのか?』
正直、今ここにいないチーフリーダーを恨みたくなった。
奴が悪いわけではないが、正直、こいつをこのまま放っておくのは、明らかに会社に損害を与える。
そのこちに、気づいていないのだろうか?
「ああ、分かった。お前は帰っていいよ」
「先輩はどうするんですか?」
「ちょっと気になるからな。一通り見てから帰る。
何かあれば、こちらで直しておいても良いか?」
「ありがとうございますっ!!」
そう言って、本当に帰っていく後姿を見送って、深い深い溜息をついた。
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