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ハジマリ 1-17
「ミサ、聞いてくれないか。僕は自衛隊に入隊した時、国家、国民のために生命を捧げるという誓約書を書いている。そのため一端命令が下されると目的完遂するまでは個人的な理由で行動することは一切許されない。任務を果たすためには恋愛すら犠牲にしなければならない。そういう世界に僕はいる」
ミッソーは淡々とした中にも情熱を込めて話した。
ミッソーはミサのどんな小さな表情の変化も見逃すまいとした。
◆ミッソー
ハジマリ 1-18
真剣な眼差しで語るミッソーを見て、ミサは微かな望みが断たれたのを感じた。
それと同時に怒りが込み上げてきた。
「じゃあ、どうして私の前に現われたのよ!あれも偶然なの?偶然私の前に現われて、たまたま人を殺した?国家だ任務だって…そのためなら捨てた女の前にさえ、のこのこ出てこれるってわけ?」
何を言っても無駄だろう。
これまでこんな口調で語るミッソーを見たことがなかった。
「いつ帰ってくるの?」
ミサは氷の溶けたグラスの水で唇を潤した。
ミッソーが遠く見える。
隣のテーブルに運ばれたサラダを見て、ミサは助手席の下に転がったトマトを思い出していた。
◇ミサ
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