第1章

14/26
前へ
/190ページ
次へ
ハジマリ 1-25 部屋の中からは返事がない。 ミッソーはドアノブを回した。 予想通りすぐに開いた。 部屋の中には誰もいない。 微かにクロロホルムの匂いがした。 ミッソーは部屋を飛び出すと階段を一気に掛け下り、エントランスの自動ドアを走りぬけ道路の両側を見渡した。 先程あった車は姿を消していた。 「チッ、やられたな」 ミッソーは唇を噛み締めた。 迂闊だった。 こんなにも早く敵が行動を起こすとは予想していなかったのだ。 ミッソーは防衛省テロ特命課へ連絡を入れた。 ◆ミッソー ハジマリ 1-26 どのくらいの時間が経過しただろう…。 意識を取り戻したミサが状況を把握するのに時間がかかった。 頭が鈍く痛み、あの不快な匂いとともに記憶が蘇る。 ミサは薄暗闇の中、必死に目を凝らし、辺りを見回した。 だんだんと目が慣れてきた。 剥き出しになったコンクリートの天井、窓は見当たらない。 息苦しい…。 後ろ手に縛られ身動きの困難な体をやっとの思いで起こすと、延ばした足に何かが触れた。 ミサは息を呑んだ。 男が死んでいる。 ミッソーが殺した男だろうか? いや、違う。 この男の額に拳銃で撃たれた跡はなかった。 ◇ミサ
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加