第1章

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ハジマリ 1-27 ミッソー中佐が防衛省テロ特命課に帰ったのは深夜になってからだった。 ミサがアルカイダに拉致されたことは明白だった。 「山本大佐、ミサがアルカイダのメンバーに拉致されました。明日のバリ島行きは延期したいのですが」 ミッソー中佐は上官の山本大佐に報告した。 「わかった。バリ島の工作員には到着が遅れることを連絡しておく。拉致された場所は判ったのか?」 「その点は心配いりません。ミサの手を握った時、バイオ発信器を埋め込みましたから」 「48時間のうちに救出せねば」 「はい」 ◆ミッソー ハジマリ 1-28 足元に転がる死体と密閉されたコンクリートの静寂が再び恐怖を呼び起こす。 それでもなんとか落ち着きを取り戻そうとミサは深く呼吸をした。 イラクでテロ組織と戦い戻ってきたミッソー。 確か彼はアルカイダの壊滅と…それじゃ私は?アルカイダに拉致されたの? 度々テレビのブラウン管から流れる残虐な行為…ミサが拉致されたことをミッソーが知る統べもない。 明日の朝、私が空港に行かなければ? もう二度とミッソーに会えないかもしれない。 俄かにギリギリと音をたて重い扉が開かれようとしていた。 殺される!助けて…ミッソー! ◇ミサ
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