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ハジマリ 1-7
助手席にレジ袋を置き、車を発進させると明かりが灯り始めたビルの波間を擦り抜けグッピーたちの待つマンションへ急いだ。
「あの子たちもお腹空かせてるかな」
四つ目の信号を左に曲がるとミサの住むマンションが見える。
その曲がり角、いつもよりスピードが出ていたのかレジ袋から真っ赤なトマトが転がり、座席の下に入り込んだ。
「あーもうっ」
ギリギリのところで手が届かない。
ミサは精一杯手を延ばし視線を道路から離した。
◇ミサ
ハジマリ 1-8
ミサが顔をあげた時、黒い自動車が目の前にあった。
急ブレーキを踏むが間に合わず車をぶつけてしまった。
黒い車からサングラスをかけた男が降りてきた。
「どこを見とんじゃ!降りて来い!」
男はミサの腕をつかんで車からひきずり出した。
「ごめんなさい」
ミサは蒼白になりながら言った。
その時だった。
駐車していた車の中から男が降りてくると、二人のほうへつかつかと歩み寄った。
ミサは声をあげた。
それは今でも忘れられない元彼のミッソーだった。
ミッソーは胸のホルスターから拳銃を引き抜くと、男の額に銃口をピタリと当てて言った。
「お前は死んでもらう」
そして静かに引き金を引いた。
相手は弾かれたように倒れ、ミッソーはミサを車へ押し込んだ。
「あとは僕に任せて!」
そう言うとドアを閉めた。
◆ミッソー
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