第1章

8/26
前へ
/190ページ
次へ
ハジマリ 1-13 ミサはミッソーの話を理解しようと言葉の一つ一つを頭の中で繰り返した。 自分には縁のない世界―イラク、アルカイダ―テレビカメラの向こうでは確かに起きている出来事。 でも私にはテレビのニュースの中だけの話。 ―テロリスト、殺害…殺害?ミッソーが?そんなの嘘! 男に捕まれた腕が痛み、全てが現実の出来事だと思い知った。 ついさっき目の前で起こったことも。ミッソーが今、目の前にいることも。夢じゃないんだ! ◇ミサ ハジマリ 1-14 「そんなことがあったんだね」 ミサは冷めた紅茶を飲み干すとミッソーを問い詰めた。 「どうして何も言ってくれなかったの?酷いよ…連絡くらいくれたっていいでしょ!謝ったってそんな…」 …私、何言ってんだろ。彼はちゃんと説明してくれたのに…私の為にしたことなのに…謝ることしか出来ないのに…。 ミサはずっと自分を責めていた。 あの日いつもと違うキスに気付いてしまった自分、ミッソーが浮気をしていると思い込んだ自分、引き止める言葉が見つからなかった自分、そしてミッソーを忘れようとしていた自分。 「寂しかった…」 素直な気持ちと涙が零れた。 ◇ミサ
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加