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ハジマリ 1-15
「僕は昨日、帰国したばかりなんだ。こんなに早くミサに会えるとは予想もしてなかった。本当に嬉しいよ」
ミッソーは優しさと愛情を込めて言った。
「ミサ、僕は明日インドネシアのバリ島へ行く。イスラム過激派の殺害命令が下った。僕はもう二度と君の前から黙っていなくなることはしない。一緒にバリ島へ行ってくれないだろうか?」
ミッソーは残りのコーヒーを飲み干すとミサの瞳を見つめた。
特命が下ると外部との連絡は一切断たなければならない。
ミッソーにとってそれは残された唯一の手段だったのだ。
◆ミッソー
ハジマリ 1-16
「明日?そんな急に…」
ミサは狼狽えた。
確かに彼に会えたことは嬉しく夢のようだ。
一緒について行きたいし、離したくない。
「私、恐いよ…バリになんて行って、もしあなたに何かあったら私はどうなるの?」
これはミサの本音だった。
他にも様々な不安が脳裏をよぎった。
話相手もいない見知らぬ土地で暮らすことや、友達にも会えないこと。
「やめられないの?そんな危ないこと…前みたいに楽しく暮らそうよ!そうだ、グッピーたちも元気だよ。きっとあなたのこと覚えてる。行かないで…ねぇミッソー、家に帰ろうよ!」
あの時、言えなかった言葉を全て吐き出したミサは、せがむようにミッソーを見つめた。
ミッソーは悲しい目をしていた。
◇ミサ
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