青空の下で

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8月 俺は琴音と岩手高原へ来ていた。 何もかも忘れて二人きりになれる場所は、人が溢れかえっていて賑やかな海水浴場よりも、自然に囲まれた岩手高原のほうがいい、と二人で決めた。 地面にレジャーシートを敷いて横になり、青色の晴れ晴れとした空を眺めてボーッとしている。 ときどき思い出したかのように、綺麗だね、だとか空って広いな、だとか他愛もない会話を交わしていた。 平穏で幸せだった。 「ねえ、大学、どうするの?」 彼女が唐突に低い声で問いかけてきた。 俺は腹に重石がのったかのような重みを感じ、ムッとする。 「何で今そんなこと聞くんだよ」 「何でって、優にとって大切なことでしょ」 確かにそうだ。このままの状況だと俺は大学に通い続けることは出来ないかもしれない。 忘れもしない一週間前のこと。 俺はハメられた。 講義の始まる直前、俺が机に置いたリュックを佐賀島という男が素早く奪い、中から女性の下着を取り出して見せた。 佐賀島は入学して早々、不良どものまとめ役となっている男で、いつも四、五人の取り巻きと一緒に行動している。 体の線は細く、体格が良くないにも関わらず、取り巻き達は彼を恐れているように見えた。 話を戻すが、俺のリュックから下着が出てきたのを見たとき、俺は間の抜けた顔をいていたことだろう。 正直意味がわからなかった。 周りの人間もそうだったに違いない。 「えっ!?それ、私のじゃん‥‥」 そういって立ち上がったのは俺が見たこともない女子学生。 その一言をきっかけに周りの人も状況を把握した。そして騒ぎ始めた。 俺も把握した。ついさっきトイレに行ったとき、外に置いておいたこのリュックの中に下着を入れられたこと、入れたのは今ニヤついている佐賀島であること。 このことはすぐに大学中に知れ渡った。 この日から俺の大学生活は地獄と化した。
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