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「乗船切符を見せてくれ」
余り聞き慣れぬイントネーションの言葉にすら胸を高鳴らせ、シーナはごそごそと肩に掛けていたデイパックから銀色に縁取られたひし形のカードを取り出す。
「はい、これ」
「!おいおい、こりゃフリーパスじゃねーか。嬢ちゃん、もしかして精霊塔のお客さんかい」
「そうだけど・・・分かるの?」
「まぁな。この切符は普通に買えば1万2千ペクト、・・・大体、オレの給料の1ヶ月分にあたるな。普通の旅人はこんな大層なものをわざわざ買ったりしない。精霊塔へ呼ばれた客人ぐらいだな、こんなもの持ってんのは」
「そうだったんだ・・・」
旅立つ日の10日ほど前に、簡単な道案内図とともに入っていたのがこのチケットだ。
島を出る時に船員に提示したら不思議そうな顔をされたのはそういうことだったのか。
「嬢ちゃんみたいに若い客人は初めて見るな。一体どういうお呼ばれなんだ?」
「ははっ!・・・秘密、かな?」
精霊遣いになるため・・・そう言ったらきっと驚くだろう。けれど、今の自分は何でもない。驚かせるなら、ちゃんと精霊遣いになって、功績を上げて、それから胸を張って自己紹介するのだ。
私、精霊遣いなのよ、と。
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