序章

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久しぶりに母の夢を見た。 生きていた頃と変わらずに柔らかに笑っていた。 娘の私から見て母は余り自分を語らない人だった気がする。 ただ穏やかな父の隣で私達姉妹を見守ってくれていた母。 時折近所の人にお茶やお花を教えていただけに礼儀作法には厳しく私と七海はよく泣きながら練習したのものだ。 「…鳴海」 「お母さん…」 私の頭を愛おしむ様に撫でる。 「お父さんと七海をよろしくね」 亡くなる前日に聞いたのと同じ言葉。 「…うん」 あの時を思い出してしまい目の奥が熱くなる。 最後のその時まで自分よりも家族の心配して旅立ってしまった母。
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