恋愛逃避行

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* 入学式の、帰り道のことでした。 家に真っ直ぐ帰ろうと思っていたら、猫の鳴き声が聞こえてきたんです。 弱々しい声で鳴いていて、声のする方を見ると、神社がありました。 そこは、まるで隠れ家みたいなこじんまりとした神社でしたが、大きな御神木があったんです。 鳴き声はその木の上の方から聞こえていて、見上げると、子猫が枝にしがみつくようにして、こちらを見て鳴いていました。 もしかして……降りられ、ない? 動けずに鳴き続ける子猫は、私に「助けて」と訴えかけているようで…… 立ち尽くす私に、降りようと試みたのか、その子は前足を伸ばし、動こうとしたのだけれど、その動きがあまりにも覚束なくて、今にも落ちてしまいそうで…… 「まっ、待って!今助けに行くから!だから動いちゃ駄目っ!」 叫んで、急いで鞄を地面に置いて。 この木は太くて頑丈そうだし私が登っても大丈夫、と必死に自分に言い聞かせて。 木に右足をかけた、その瞬間。 「待った」 突然肩を掴まれ、木から引き離されたのです。
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