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目を覚ますと、まず朝食に使う食材を取り出すために冷蔵庫を開けた。
中はガラガラで食材や飲料が点在しているだけだ。
なので、僕たちは少ない食材で作られた朝食を食べた後、街に買い出しに行くことにした。
服を着込んで車庫にあるキューベルワーゲンに乗り込んだ。
そしてエンジンを始動させた。
エンジンの胎動がハンドルを通して伝わってくる。
僕はエンジンを傷めないように、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
車庫から褐色のキューベルワーゲンが暖かな朝日の前にその姿を見せた。
車体を震わせながら速度が増していき、森を経由して街に至る細い砂利道に出た。
森の空気は引き締まっており、森全体が凍てついているように思える。
そんな森は僕たちを快く思っていないのか、冷たい寒風が吹きつける。
「寒いよお」
サイズの合っていないロングコートを羽織っている少女が言った。
「寒くない冬は冷たい鍋のようにらしくないものだよ」
「それぐらいわかってる!」
少女は足をジタバタさせて不満の意を表した。
不満のはけ口を探しているのか、少女は周囲を見渡し始めた。
しかし周りは鬱蒼と茂った木があるだけ。
周りから見出すのを諦めて空を見上げた
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