無知な少年

20/34
前へ
/41ページ
次へ
怒り、悲しみ、悔しさ、諦めなどの色が混ざって不透明で複雑な黒ができている。 虚脱感しかない暗い瞳。 リミアはこの目に慣れてしまっていた。 殺害する直前に必ず向けられるからだ。 目の前の少年も例外ではない。 「貴方の名前は何ですか?」 少年から返事はない。 続けて質問する。 「貴方は何者ですか?」 リミアの声が少年にやっと届いたらしく視線を落とし、考えるそぶりをする。 答えはすぐ返ってきた。 答えによっては少年の息の根をとめる。 仲間は制止するかもしれないが、目の前にいるのはどう考えても敵だった。 だから少年の解答を聞いたとき思わず唖然としてしまった。 「ぼくが、誰だか……教えて……?」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加