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視界が黒く塗り潰されているのは変わっていなかった。
両膝を立て、顔を埋める。
伏せられていく世界に違和感を覚えたが、理由は見つけられなかった。
少年は夢を見る。
暖かくて大切な何かを想起させる夢。
見覚えのない風景なのに懐かしいと感じるのはついに自分が壊れてしまったからだろう。
黄金に染まった草原の間を風が駆け抜けた。
点在する花畑の花びらをさらって巡る姿はまるで舞い踊っているようだ。
草原には一本の大きな木がそびえ立っていた。
少年は背中を預け、ただ黄昏色に満たされていく景色を眺めていた。
この世界は途方もなく美しかった。
汚れなど見当たらない、完璧に近い綺麗な世界。
少年はこんな世界を望んでいた。
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