Pro.夢の温もり

3/4
前へ
/41ページ
次へ
そんな生き方をしてきた自分が“誰かのために”と思えること自体軽く奇跡なのかもしれない。 最初で最後の無償の善意を人に与える。 前の自分だったら、反吐が出ると罵っただろう。 いや、そこまで罵倒せずとも冷たくあしらうはずだ。 少女もそんなこと望んでいないかもしれない。 与えるなどとずいぶん大層なことを豪語したが、上乗せせず心の背丈に合った言葉に言い換える。 ──知ってほしい。 まだ、上には光があることを。 ──気づいてほしい。 自分の深く暗い瞳には仄かな火が灯っていることを。 少年は駆けた。 少女のために。 自己満足でいい。周りに嘲笑されてもいい。 ただ、少女を思って懸命に手を伸ばす。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加