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樹海のような深緑の瞳と目が合う。
白い肌に端整な顔立ち。
頬と唇は微かに桜に色づいているが妖艶っぽさはない。
栗色の長い髪と相まって清流のような涼やかさと爽やかさだけがそこに存在していた。
綺麗な少女は眉根を寄せて首を傾げる。
「どうしたの? 早く行こ」
少年から顔を離し、手を掴むとそのままどんどん歩いていく。
少年の頭は混乱し始めた。
この少女に見覚えはない。
ましてや銃を突き付けた少女とそれを牽制した青年以外の人を知らない。
何故だろう。
知らない少女なのに目が合った瞬間胸が苦しくなった。
恋の苦さ、甘さにはあまりにも程遠い。
恋ではない苦しさ。
きっと自分はこの少女を知っている。
今は思い出せないけれど、どこかで会っている。
いや、顔見知り程度ではない。
もっと深い関係だった、と思う。
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