無知な少年

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波打つライトブラウンの髪が夕日の光を吸って黄金色に輝いている。 絹のように手入れが行き届いた髪につい目が止まってしまう。 こまめにブラッシングして毎日欠かさずダメージケアとかしているんだろうな、と勝手に想像する。 見惚れる容姿をもつ少女は足を止め、振り返った。 笑みをにじませ、ついでに頬も赤らめた少女がゆっくり音を刻む。 「さっきの約束、忘れないで」 記憶の片隅にちり、と痛みが走った気がする。 約束を交わした覚えはない。 だが、何故か消えたはずの記憶が訴えかけてくる。 なにか重大なことを忘れている。 それは分かっているのに、何を忘れたのか思い出せない。 もどかしい。 早く記憶を取り戻してスッキリしたい。 だが、それが出来ないことを頭の隅で理解している。
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