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視界が曖昧な中、少年の鼻を仄かな香りが撫でた。
心が落ち着く、懐かしい匂い。
どこで嗅いだのか忘れてしまったが、大切な思い出が詰まっていたような気がする。
暖かくて、切ない何かが。
だが、そんな不安定な記憶は目の前の事象に断たれた。
鮮明になった視界に映る部屋に少年は見覚えがなかった。
ゆっくりと体を起こす。
たったこれだけの動作で体のあちこちに疼くような痛みが走る。
痛みに眉を潜め、最小限の動きで部屋を見渡す。
部屋はログハウスを思わせる内装が施されていてベッドや椅子などの家具は木材で出来ているようだ。
ベッドに腰掛け、ため息を零した。
何故、自分がこんなところにいるのかまるで記憶がない。
何故、ベッドに横たわり見知らぬ部屋にいるのか。
何故、記憶にない部屋の匂いが懐かしいなどと思ってしまったのか。
よくよく考えれば、目覚める前も何をしていたか覚えていない。
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