無知な少年

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与えられた情報はあまりにも不確かで謎はあまりにも多過ぎる。 途端に少年は怖くなった。 自分の存在も数少ない情報と同じで簡単に揺らいで消えてしまうのではないか。 実は情報は正当で扱っている人間が不確かだから情報が虚(ウツロ)に見える。 世界は誰にでも平等に与え、失わせるのが真実で自分という人間の存在の方が空虚なのではないか、と世界の重圧に押し潰されそうになる。 首筋に冷えきった汗が伝い、鳥肌が立つ。 全身がわななき、それを押さえ込もうと両腕を交差させて反対側の肩を強く握った。 「僕は」 小さく開いた口から零れた声は震えていて、ひどく掠れていた。 「誰……?」 誰に問いかけた訳でもなく、声は虚無な空間に吸収される。 残響はどこか嘆いているようだった。
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