衰弱した野良犬

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とある街に一人の旅人が宿を探し歩いていた。どの宿の旅人達で溢れかえっていた。  この世界のどこかにあるという伝説の宝を求めて。 その宝はなんなのか、旅人達にも分からないという。  旅人達もただ、風の噂を耳にしてはその場所へと旅に出る。 宿探しをしている旅人もその一人。 兄弟の長男である旅人は、家が貧しく出稼ぎに出ても 「人手は、足りてるんでね。それに、あんたは、まだ十八にもなってないだろう。」 十六であるため、子供扱いされ門前払い。 「このままでは、家族も飢え死にしてしまう」 何か大きな仕事はないか、手当たり次第探した。 その結果、風の噂を耳にし、旅に出ることにしたのだ。 だが、旅人になったことでお金が稼げるわけでもない。風の噂だけを頼りに旅を続ける日々。 やっとの思いでこの街に来たのだが、今夜は野宿のようだ。 旅人は寝床としていい所はないか街中を探し歩いた。 すると、ガサガサと茂みの音を耳にする。 気になって音のする方へ寄ると、狭い路地の奥から聞こえてくる。 「こんな路地に茂みなどあるのか?」 不思議に思いながらも路地の奥へと進む。 ガチャガチャと足元には、ゴミが散らかっていた。 さらに奥へ進んだ。 「茂みだ・・・」 誰一人通らないような路地。 だからなのか人の手入れがなかったため、雑草が生え茂みとなってしまっただろう。 ガサガサ 茂みが激しく音を立てる。 旅人は驚き、腰につけていた短剣を構えた。 「何かいるのか?」 旅人は構えながらも茂みに近寄る。 そして、茂みに手を伸ばした瞬間。 「痛っ!」 何かに噛まれた。獣の牙らしきもの感じたが、よく見えない。 茂みをよけて覗こうとした。その時。 ガサッ! 「うわぁ!」 何かが飛び出す。 旅人は慌てて短剣を振った。 振るったと同時に何かを切りつける。 「キャウン!」 「あ!」 子犬だ。とても痩せ細っている。 今にも倒れそうなくらい、衰弱していた。 旅人は、罪悪感を感じた。 「こんな小さな命を傷つけてしまうなんて・・・。」
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