国を捨てた放浪者。

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すると、酒場の近くを歩いていた兵士が謎の人物に気づく。 「! いたぞー! 酒場の屋根だ!」 「っち。バレちまったか。」 謎の人物は屋根から飛び降り、狭い路地裏へと入っていく。 兵士達はいつの間にか十人以上集まり、狭い路地裏へ入る。  夜中にも関わらず外がうるさい。寝ていたウィンリスは目をこすりながらふらふらと立ち上がりドアの前に立った。 外の様子を覗こうとドアに手をかけたその時。 ドアが独りでに開いたのだ。 しかし、ドアの近くには誰もいない。 ウィンリスはキョロキョロと周りを見るが、やはり誰も見当たらない。 不思議に思ってドアを閉めると、背後に気配を感じた。 ベットの方を見るがディスは眠っている。 だとすると今ウィンリスの背後には、何がいるのだろうか。 恐る恐るゆっくりと振り向くと、黒いローブに身を包んだ人物が立っている。 酒場で出会った謎の人物だ。 足音一つたてずに家に入ったというのか。 そうだとしてもウィンリスはドアから離れていなかった。 この人物は人間ではないのだろうか。 不思議に思いながら謎の人物を見つめるウィンリス。 謎の人物は一歩ずつウィンリスに近づくが、逆にウィンリスは一歩ずつ後ろにさがる。 だが後ろにはドアがあり、行き止まり。 逃げ場がない。 大きな声で叫べばディスは起きるはずなのだが、ウィンリスは何故か叫ぼうとしない。  謎の人物は叫びもしないウィンリスに問いかける。 「お前。俺を怖がってないな。」
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