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ぶつぶつと呪文を唱えているようにも見える。
子犬は、気づいてもらうために近くにあった壺をひっくり返す。
ガシャーンと、壺は簡単に割れた。
彼女はそれに気づき、子犬を睨んだ。
「おい。勝手にあたしの家に入らないでくれるかな? 野良犬さん」
子犬は、じっと目をそらさず見つめ続けた。何かを訴えているように・・・。
彼女も何かを感じたのか、子犬に話しかけ始める。
「ふーん。あんた、あたしに用があって来たのか?
それとも・・・魔女のあたしに用があるのか?
何にせよいくら魔女でも動物の言葉はわからない。だから、喋れるようにしてやるよ。」
そう言うと彼女・・・魔女は、子犬の口を掴むと呪文を唱え始めた。魔女の手元が一瞬光った。
「これでよし。さぁ言いたいことあるならいいな。あたしは忙しいんだよ。」
「・・・。」
だが子犬は魔女の問いかけに対して何も言わない。
「ちょっと!喋れるようにしたんだから言いたいこと言えっての!」
「・・・。」
「まさかだと思うけど・・・人間の言葉も分からないのか?」
「・・・。」
「・・・嘘でしょ。」
子犬は何も喋らなかった。
魔女は、呆れて大きなため息を吐く。
それと同時に子犬はくわえていた牙を魔女の前に置いた。
魔女はそれを手に取り、眉間にしわを寄せる。
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