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ディルアは答えたウィンリスの頭を撫でた。
それを見て一安心したディスは大きな声で、気合を入れる。
「よーし! 旅に行くことが決まったからには武器が必要だ! 鍛冶屋ディスの特製武器を作ってやる!」
長い夜が明けると共に、ウィンリスとディルアは旅支度をする。
ディスはウィンリスが持っていたクー・シーの牙を使い短剣を作り始めていた。
作り始める時にウィンリスはとても嫌がったが「武器にすることによりクー・シーの牙だということがバレづらくなる」ということを説明するとすんなりと渡してくれた。
ディルアはクー・シーの牙を見ても驚きもしない。
城にはもっと貴重な物が集まっているからだろう。
街は兵士達が警備をしていたが、旅に必要な食料を買うため、ディルアはローブを外して行動した。
だが、王子だとバレてしまえば城に戻されてしまう。
そこでバレないよう目隠しをして買い物をする。
もちろん一人では物にぶつかるため、ウィンリスと手を繋いで歩くが、ウィンリスだけに頼っては目的の買い物もできない。
好奇心旺盛のウィンリスは興味を持つとそこへ突っ走ってしまうからだ。
なので、能力を使い目隠しをしても見えるようにした。
「これとこれを八個でこいつを十個。」
「旅人さんこいつは今値上がってるけど・・・大丈夫なのかい?」
旅食料を売る商人が手にしていたのは気軽にどこでも食べれるクッキーのようなパンだ。
旅人達の間では、必要不可欠な食料品なのだがこの辺だと小麦の育ちが悪く、高価な食料となっていた。
ひと袋あたりに入っている量は三十個ほどで、値段は銀貨10枚。
それをディルアは十個買うという。
収入のない旅人が銀貨百枚分の食事を買うなど、商人にとってはとてもいい客でもあるが、怪しいと思えば怪しく思える。
ディルアも商人の顔を伺いつつ答えていく。
「この妹が育ち盛りでな。特にそれを気にっていてよく食べるんだ。」
商人はディルアと手を繋いでいるウィンリスを見て「ふむ。」と納得するかのようにディルアから銀貨をもらい、食料を手渡した。ディルアは受け取ると次の店に向かおうとするが、ウィンリスがいきなり違う方向へ走ろうとする。
「っ! おい! どこ行くんだ!」
ディルアは素早くウィンリスの服をつかみ、引きずりながら店に向かった。
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