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「ほーら! 立派な物が出来たぞ! ウィンリスはクー・シーの牙の短剣だ。さすが伝説になるほどの牙だ。
ダイヤよりも硬いかもしれん。ディルアのは片手剣だが、ただの剣と比べるもんじゃねぇ。
全ての宝石を溶かし混ぜ込んだ。鋭さも備えてあるからどんな魔物や敵でも、切れる。まぁ・・・魔法にはかなわないかもしれんが」
ディルアはディスの作り上げた剣を手に取り、真剣な眼差しで見つめた。
ウィンリスも短剣を手にすると不思議に思いつつ、剣先を指で触れる。
恐れ知らずなのか触れた指から血が出ても泣かない。
それを見たディスは少しウィンリスを哀れんだ。
感情という心を持っていないのだろうかと。
一方ディルアは剣を試しに振り回す。そして、ディスの顔を見るなり剣の評価を言う。
「ふーん。まぁいい出来なんじゃねぇか? 重たいのは少し気になるがこれくらいならなんとかなりそうだ。使ってやるよ」
「王子ならもっといいものを使っているんだろうが・・・作り手の想いが詰まっていれば価値はそれぞれ違う。
その目利きもあれば立派な王子なんだがな。」
「・・・うるせぇな。俺は王を継げない。今は王子でもないんだ。ただの放浪者」
「っま。旅の安全を祈るよ。その子をちゃんと守れよ?」
「ウィンリスが勝手に行動しなきゃいいけどな。」
「それはしょうがないだろう。まだ子供だ。
それに世界を知らないとなると自分自身で触れていく必要がある。
そうして学んでいくもんだ。親がいなければ教わる人がいない。そうだろ?」
「・・・・・・。」
ディルアは黙った。自分には親がいて親から色々教わり、城の中だけの生活ではなく、城の外にも出させてくれた。
それに比べたらウィンリスは可哀想なのかもしれない。
ディルアは少しウィンリスのことを考えた。
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