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「これは・・・伝説とされてるクー・シーのじゃないか? あんた・・・ただの犬じゃないだろ。」
魔女は、慌てて家の本棚をあさり始め、ドタバタとあっちの本、こっちの本と読みあさる。
「あった・・・これか。」
何かを見つけたのか、真剣な眼差しで読み始めた。
「クー・シー妖精伝説の犬。
二歳くらいの牛ほどの巨大な図体で脚は人間の脚と同じくらい。
体中が暗緑色の毛で目はギラギラと輝き、足音を立てずに風と同じ速度で滑るようになめらかに走る。
妖精達の領土と言える妖精の丘の番犬。
人間には、決してなつかない。」
読み終えると子犬と本に載っている絵を見比べる。
「どこも似ていない・・・毛の色は、茶色だろ? それに頭の前髪?から尻尾までの白い毛・・・
クー・シーとまったく違いすぎる。
なのになんでクー・シーの牙なんか持っている・・・ただの犬じゃないのは、確かだな。」
魔女は頭を抱えた。子犬が何を訴えたいのか、なぜ自分のところに突然来たのか。
すると、子犬が始めて声を出した。
「クゥ・・・」
「あんたの言いたいことが分からない・・・ん? いや・・・
分かるじゃないか! あたしは、魔女なんだ。
そうさ、高貴な魔女様さ! 魔法を使えばいいだけじゃないか!
ばっかだなあたしは、アハハハ!」
家中に魔女の笑い声が響き渡った。
そして魔女は自分の頭と子犬の頭をくっつけ、呪文を唱える。
子犬と魔女を囲むように青い光が包む。
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