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「私は“あんた”という名前じゃない」
「じゃあなんだよ」
人間は容器に何かを入れて持ってきた。茶色く、泥のように濁ったもの…。
「私は銀と呼ばれている」
「じゃあ銀さんよぉ、こりゃあ泥じゃねえか」
「私は泥を飲ませたりはせん。これは味噌汁と言うのだ」
いや、良い香りの泥だ。キノコと黒いヒラヒラしたのが中にあるが。
「人間はこんな泥みてぇなのをいつも飲んでんのか?」
銀と名乗る人間は頷くだけだった。
「大丈夫かよ…」
「いやなら飲まなくてもいいぞ?」
「……」
しかし、オレの腹はグゥと鳴っていた。
銀さんはそれを知ってか知らずか、また奥へ戻った。
しばらくして、銀さんが次に持ってきたのは、米だった。
それも、山盛りだ。
「っ!…銀さん、こんなに大量の米…貴重だろうが」
「貴重だから、だ。まあ肉は無いがな」
銀さんの器は並みだった。
「では、いただこう」
そう言って手を合わせて食べ始めた。
もう、疑う余地はなさそうだった。
「銀さん、いただくぜ」
米は闇が光を包む時。つまり、日食の時にしか食べられなかった。
光が宿る米は、光が弱った時に食べられたというわけだ。
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