第一楽章

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「私は“あんた”という名前じゃない」 「じゃあなんだよ」 人間は容器に何かを入れて持ってきた。茶色く、泥のように濁ったもの…。 「私は銀と呼ばれている」 「じゃあ銀さんよぉ、こりゃあ泥じゃねえか」 「私は泥を飲ませたりはせん。これは味噌汁と言うのだ」 いや、良い香りの泥だ。キノコと黒いヒラヒラしたのが中にあるが。 「人間はこんな泥みてぇなのをいつも飲んでんのか?」 銀と名乗る人間は頷くだけだった。 「大丈夫かよ…」 「いやなら飲まなくてもいいぞ?」 「……」 しかし、オレの腹はグゥと鳴っていた。 銀さんはそれを知ってか知らずか、また奥へ戻った。 しばらくして、銀さんが次に持ってきたのは、米だった。 それも、山盛りだ。 「っ!…銀さん、こんなに大量の米…貴重だろうが」 「貴重だから、だ。まあ肉は無いがな」 銀さんの器は並みだった。 「では、いただこう」 そう言って手を合わせて食べ始めた。 もう、疑う余地はなさそうだった。 「銀さん、いただくぜ」 米は闇が光を包む時。つまり、日食の時にしか食べられなかった。 光が宿る米は、光が弱った時に食べられたというわけだ。
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