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オレの角は無い。
いや、無くなっていた。
ある朝起きて、いつものように一人で狩りに出掛けたが、一頭の熊でさえ狩るのが困難だった。
そして、仲間に言われてから気が付いた。
「お前“角”はどうした」
オレら、鬼は、死ぬと角が無くなった。
鬼は少しの事じゃ死なないが、その死が訪れると、角が無くなったのだ。
が、オレは生きているのに角が無くなっていた。
角は、怪力や並外れた力の源だと考えられていたから、角が無い今、狩りが出来ないのは納得ができた。
角が無くなるなんてことは考えられないことだった。
それだけでみんなの注目の的だった。
おまけに力もない。
屈辱だった。
オレをバカにしてくる連中と闘うこともできない。
力(=権力)が支配する鬼の社会で、もはや生きる場所はなかった。
しかし、自分で自分の命を絶つことはしなかった。
それは最も不名誉なこととされていたからだ。
それだけは何があってもしないと誓っていた。
となれば、残された道は一つ。
ここを出ることだ。
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