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一瞬だった。その人間は片手を前につきだし、一言何かを呟くとオレは山羊と同じように吹き飛ばされた。
鬼の落ちた衝撃で地面が陥没した。
「何すんだ!」
オレは立ち上がり、人間に向かって突進した。
「ごらぁ!」
今度は人間は何もしなかった。
人間に飛びかかろうとしたが、それは出来なかった。
見えない固い壁があった。
それに衝突した。
人間はまた何かを呟いた。と同時に人間が持っていた棒が長い刃物に変わった。
倒れたオレは間髪入れずにその長い刃物を胸に突き付けられた。
身動きが取れなかった。
「どうだ、まだやるのか?」
「おめぇ…」
「もう一度聞く。まだやるのか?」
この人間は手を触れずに鬼を抑えたのだ。勝ち目は無かった。
「クソッ!」
「分かった様だな。」
人間は続けて言った。
「お前鬼だな。なぜ人間界に来た。」
「人拐いだ」
「ふん。嘘ほど醜いものはないぞ」
その人間は鬼の硬い皮膚に刃物で傷をつけた。
「…ッ!仕方なかったんだ。オレに罪はねぇ!」
人間は気が付いたようだ。
「ん…角か。」
「うるせぇ、角が無くて悪いか!」
「喚くのは勝手だが、それではどうにもならないぞ」
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