第一楽章

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一瞬だった。その人間は片手を前につきだし、一言何かを呟くとオレは山羊と同じように吹き飛ばされた。 鬼の落ちた衝撃で地面が陥没した。 「何すんだ!」 オレは立ち上がり、人間に向かって突進した。 「ごらぁ!」 今度は人間は何もしなかった。 人間に飛びかかろうとしたが、それは出来なかった。 見えない固い壁があった。 それに衝突した。 人間はまた何かを呟いた。と同時に人間が持っていた棒が長い刃物に変わった。 倒れたオレは間髪入れずにその長い刃物を胸に突き付けられた。 身動きが取れなかった。 「どうだ、まだやるのか?」 「おめぇ…」 「もう一度聞く。まだやるのか?」 この人間は手を触れずに鬼を抑えたのだ。勝ち目は無かった。 「クソッ!」 「分かった様だな。」 人間は続けて言った。 「お前鬼だな。なぜ人間界に来た。」 「人拐いだ」 「ふん。嘘ほど醜いものはないぞ」 その人間は鬼の硬い皮膚に刃物で傷をつけた。 「…ッ!仕方なかったんだ。オレに罪はねぇ!」 人間は気が付いたようだ。 「ん…角か。」 「うるせぇ、角が無くて悪いか!」 「喚くのは勝手だが、それではどうにもならないぞ」
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